西岡文彦さんの「ピカソは本当に偉いのか?」を読みました。
アートに詳しくない方でもその名前と画風は知っているパブロ・ピカソ(1881-1973)
生涯で制作した作品の点数は油絵だけで1万3000点。
ゴッホと違って、現役の時から作品はどんどん売れ、貧乏な時代がほとんどなかったそうです。
ところでピカソの絵を見て、素直にすごいと思いますか?
なぜあれほど高い評価を受けているのか理解できますか?
著者の西岡文彦さんは版画家で、多摩美術大学の教授。
「ピカソが本当に偉いのか?」気になる方は読んでみてください。
ピカソの生い立ちから分かりやすく紹介されており、彼の成功の秘密が分かります。
本の中で興味深かったのが、写真の誕生について。
1826年にフランスのニセフォール・ニエブスが世界で初めて写真の撮影に成功します。
それまで写実的な表現が主流だった絵画の世界に大きな影響を与えました。
近代絵画は写真に対抗して写実描写を放棄しましたが、当時の画家が写真に対して抱いていた危機感は私たちの想像を上回るものがあり、ピカソの世代に至ってなお真剣に心配しています。
名声を確立してだいぶ経った後にムンクに出会った折りにも、ピカソは写真の出現が絵画の存在基盤を危うくしていると語っています。
写真の登場後の絵画は印象派、象徴主義、キュビズム、抽象主義と従来の表現手法から大きく離れていきます。
ピカソも時代の流れに合わせて、画風を大きく変化させていきます。
元々、天賦の才があり、幼い時からデッサンの英才教育も受けてきました。
当時のアート界の流れを掴むビジネスマン的なセンスも優れていたピカソ。
ただ奔放な女性関係は偉くない。
それがまた作品の肥やしになっていたのかもしれませんが。